さらば東京

 自分たちの寝場所を探し当てた後、ふらふらと船内を見学しながら甲板に出てみました。まだ船に乗り込んで来る人も多く、小笠原向けの沢山のコンテナの引き上げもおこなわれていました。沢山のコンテナが船上に下ろされ、オートバイなども積み込まれていました。島の人たちの生活に必要なものも沢山積み込まれているのでしょう。そんな様子を見ながら出向までの時間を過ごしたのです。

 岸壁で作業をしている人たちや車の動きが慌ただしくなって来ました。いよいよ出航の時間が近づいて来ました。乗船ゲートもしめられ、係の人が岸壁からはなれました。船の汽笛が響いたあとエンジンの音が大きくなり、ゆっくりと船が岸壁から離れていきました。だんだん港が遠ざかって行き、その向こうの建物が小さくなって行くのが見えると少し感傷的な気分にもなりましたが、その反面楽しい旅への思いが沸き上がって来ました。

 船は小さい船や大きい船とすれ違いながらゆっくりと東京湾を進んで行きます。遠くには臨海工業地帯のような工場が見え、船の進方角を見るとそこには大きな海がありました。東京湾を出るあたりでイルカの群れが泳いでいるのがみえます。船と同じ方向へ向かって伴走しているかのようにも感じました。振り返るとすでに陸はかすんだ状態で船は海の真ん中にいるようです。

 出航の高まる気持ちも陸からだんだん遠ざかる感傷的な気分も徐々になくなってくると、海の上にいる、陸が近くないという不安が少しありましたが、しばらくは飽きる事なく海を見続けていました。甲板の上は日当りも良くて日光浴には良いのかもしれませんが、今から日に当たりすぎていても疲れるだけだと思い船室に戻りました。

 船室には若い人たちが中心でしたが、グループで旅する人やひとり旅の人、小笠原に帰るための人と色々な人がいるようでした。近くの少し年配のグループの人たちは父島から母島にわたり釣りをするのだそうです。こういう人たちとの25時間もの船旅がはじまりました。